篆刻雑記(五)

姓名印について


姓名印は白文印で刻るのが通例です。

文字通り姓と名の両方が入っているものが正式です。

日本では女性は結婚すると姓が変わったりするので名のみの印も認知されています。

姓のみの印は書画の落款印にはほとんど使いません。

製作者を示すための落款ですから、姓だけでは製作者が特定できないからです。

中国の方などは姓の種類が少ないので、同姓の方が多くいます。

中国では姓の印を使いたい場合、姓の下に『氏』の字を添加します。

日本でいうと一族というニュアンスで『家』のような感覚でしょうか。

特に収蔵印などでは日本でも「○○家蔵」などと使われます。

 

また姓名の文字の字数、繁簡、バランスなどによって文字が添加されることがあります。

姓名・名の後に『印』 之印』 『私印』 『信印』 『印信』 『之印信』などの文字を付加したりします。

姓名印に限らず印文は右側(右行)より左側(左行)にむかって読むのが大原則です。

姓名印は白文四文字印が各文字スペースも正方形になり、最も安定し美しくなります。

範とする秦漢の官印もこの白文四字印文のものが多くみられます。

印篆と呼ばれる秦漢の印に用いられた文字もほとんど正方形の外形輪郭を持っています。

ついつい文字のみ観てしまいますが文字以外の部分を注目してみます。

注視してみるとそこにはきれいな「田」字形の赤い(コピーでは黒い)部分が見えてきます。

印においてはこの文字間や文字と外輪郭との間隔も重要なのです。

印全体における朱白の配分バランスなども製作・鑑賞においても重要なポイントです。

 

また前漢と後漢の間に挟まれた新莾の時代には五行説が流行って印文もわざわざ五文字にしています。

姓名が五文字の人は参考になります。

 

また地方の蛮族の長(王)などに与えた印などは多字数のものが見られます。

有名な『漢委奴国王金印もこの種のものです。

長い姓名の人や付加語をつけ印のバリエーションが欲しい人などの参考になります。

 

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