篆刻雑記(六)

回文印について

 

前に印文は右行より左に向かって読むと記しました。

しかしこれも例外があります。

特に中国の方は一字姓二字名の人が多くおられます。

これに『印』字を付加し四文字にし原則どおり並べると困ったことが起こります。

二文字目は姓の一部なのか、名の一部なのか解からなくなるということです。

このような誤読を避けるために『回文』という手法が用いられます。

一字姓二字名の場合、右行、姓の下に『印』の字を持ってきて左行に名を入れるのです。

そしてこのように右下位置に『印』の字があるときは要注意です。

このような場合は右上字から左回りに読んで最後に印を読むという約束があるのです。

この手法により姓と名が別行に別れて間違って読むことがなくなるわけです。

便利な方法ですが、前述のようになんでも回文にできるわけではなく、印の字が右下にある時のみの約束事です。

文字の画数などの関係で回文にしている印を見かけますが、本来これはアウトです。

ことわらなくては誰にもわからないわけですから。せめて側款(印の側面に刻った篆刻の落款)にはこの事を明記しておくべきです。

この約束を知っていれば自分で印を作るときにこの手法を取り入れることもできるのです。

 

姓名印の印文省略

 

前に中国の方は一字姓が多いと書きました。

日本では二、三字姓の一字のみを取り、中国人風にペンネームのように使うことがあります。

印でも同じように姓の一字を取り、あとを省略する手法があります。

もう亡くなられましたが、長い間「長揚石」先生の「長」が本姓と思っていました。

実は「長谷川」というのが本姓だったということもありました。

また名の方でも長い名前の人などが上の一字、二字を取ってあとを省略する事もあります。

これは印のバリエーションを増やす意味でも利用価値は高いのです。

しかしあくまで姓名全部が入っていることが正式という事を忘れては行けません。

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