篆刻雑記(四)

引首印について

印を注文するときに三顆組といって三つ一組になったものを注文することがあります。

印面が正方形ニ顆とちょうどそれを縦半分に割ったような印面が縦長長方形のものが組になったものです。

この正方形ニ顆は落款印として使うことが多いのですが、残りの縦長印面のものはどう使うのでしょう。

この印は『印』、俗称『』、『』などとと呼ばれています。

多くは書作品の右肩に押されるものです。

印文は詞句が多く、形も長方形に限るわけではなく楕円でも自然形でもかまいません。

引首印の始まりは堂号印だったらしく、今も堂号印を使用している人も稀に見かけます。

 

押脚印について

作品の右下に印を押す場合もあります。

これはまたは『押脚印』呼ばれます。

押脚は詞句の印が多く、こちらは正方形印面のものが多く使われます

詞句を刻ってありますので、成語印と呼ばれ落款印として使うこともできます。

よく『』、『』と呼んでいるのがこれです。

引首印と押脚印の両方を押すとうるさくなります。、使うのであればどちらか一方がよいと思います。

 

中国の古い書画や拓本、法帖などを観ると、ところかまわず印を押してあるものがあります。

これは落款印ではなく収蔵者、鑑賞者、鑑識者の印です。

収蔵印、鑑蔵印、過眼印などと呼ばれています。

有名な収蔵者、鑑定家などの印は書画の真贋の手がかりにもなります。

篆刻雑記(三)

落款印について

落款印として使う印は様々ありますので列記してみます

姓名印:姓名、または名を刻った印。

落款印では作者を特定する意義があります。認印などに多くられるな姓だけの印は使用しません。

表字印(本名とは別の呼び名)を刻った印

雅号印:雅号(書画などのペンネーム)などを刻った印。お茶の茶号、俳人の俳号、僧号などもこれに属します。

堂号印自分の居住している場所に名前を付け、その形態、種類にあった語を付加した印です。

文明堂・澤庵・一刀斎のように堂号・庵号・斎号などを刻った印です。

成語印好きな語句、成語などを刻った印。

役職印自分の役職などを刻った印。公的なものであれば官印とも言います。

紀年印:生年・制作年などを刻った印。

住居印住んでいる所を示す印などがあります。

雜印一族の氏や誰の門人かとか誰の子孫かとか様々な自分にまつわることを刻った印など多様で゛す。

 

篆刻では古くより様式、格式とも漢時代の官印(身分・役職などを示した印)を最高のものと考え手本としてきました。

この漢の官印は大きさ様式、材質なども決まっており、白文(陰刻)印でした。

そのため白文印は朱文印より格が上といわれ、落款印で最重要な姓名印の多くは白文印で刻られます。

したがって二顆印を押す場合、白文印が上になることが多いのです。

 

昔は署名と印の重複を避けたりしていました。

幼名や字など今では解からなくなってしまっている慣習や約束事があり、印の優先順位はけっこう難しかったのです。

今は書の落款に使う印は姓名印と雅号印くらいのものですからさほど難しいものではありません。

先に述べたとおり姓名印を優先させれば問題ないのです。

一顆の場合は朱、白文どちらでもかまいません。姓名印がない場合は本人を指し示す度合いが大きい順、似たようなものであれば白文印を上に押した方が無難です。

 

また人に作品を頼まれて差し上げる場合にはかなり気を付けなければなりません。

特に目上の方に対する為書きなどは自身の署名は雅号を控え姓名を書いた方がよいのです。

本当は目上の方に手紙を出すときも自分の氏名を姓号で書くことは失礼にあたります。逆に差し出す相手が目上の方で雅号がある場合はそれを使った方がよいのです。

篆刻雑記(二)

落款印について

まず書において使用する印の使い方や約束事について触れてみましょう

したり、署名をしたりする事を『落款を入れる』といいます。

署名のみでも印のみでも落款です。

制作の日時、場所、動機なども書いて、さらに印を複数押したものまですべて落款といいます

 

落款との略です。

落成とは完成のことで、款識とは古代中国の青銅器銘文の呼び名に由来しています。

今は作品に関することを書く事をいいます。

作品の完成のとその、作者などを示すこととでも言いましょうか。

そしてその落款に用いられる印のことを落款印と呼ぶのです。

 

印には用途により官印と私印とがあります。

官印というのは身分、官職や役職名などの印です。

私印というのは私事に関する印で、落款印などはほとんどこの範疇です。

書画に用いられる落款印はなどと呼ばれ色々な種類があります。

まず様式による種別として文字が白く出る『白文(陰刻)印』があります。

反対に文字と外輪郭が赤く出る印を『朱文(陽刻)印』といいます。

印判などによく見るものはほとんどが朱文印ということになります。

 

いろいろな方からの質問で多いのは複数(2顆が多い)の印を使う場合、どれが上になるかという事です。

この落款印の上下については朱白よりもむしろ印文(印に刻ってある文)によると思っていた方がよいでしょう。

まず優先順位として一番上に押さねばならないのは姓名印(姓名・名の印)です。

ですから朱文印であっても姓名が刻ってある印であれば上に押すという事です。

姓名印がない場合、本人を指し示す度合いが大きいものの順に押せばよいのです。

似たような度合いの印であれば白文印が上になった方がよいと思います。

篆刻の世界では白文印の方が格上とされています。

篆刻雑記 (一)

はじめに         

印は書において紅一点、押印は龍の眼を入れるがごときなくてはならない重要な作業です。

浅学未熟な私ですが、皆さんが書を勉強する上で必要と思われるの知識や名印の鑑賞、印にまつわる話などを書いていこうと思います。

 

印について

ひとくちに印といっても、(天皇の印)もやはり印なのです。

しかしながら、昔から鑑賞に耐え得る立派な印(印章・印璽)は、印判(ハンコ)とは区別され、芸術品として尊重されてきました。

 

名家ほど印に気を遣い興味を持ち、さらには自分で印も刻していました。

篆刻は中国では清代あたりから詩書画とともに文人と称するには必要な教養とされていたほどです。

 

日本でも頼山陽、富岡鉄斎などは時に興じて鉄筆(印刀)を執っていました。

細井廣澤を日本篆刻の始祖と仰ぐ人もいます。

池大雅においては書画の盛名に隠れた感はありますが、篆刻においても卓抜なる業績を残しているのです。

幸田露伴が篆刻を趣味としていた事は有名ですし、森鷗外、与謝野鉄幹作の陶印も残っています。

棟方志功は篆刻に並々ならぬ興味を持ち千を越える自用の印を持っていたそうです。

富本憲吉、浜田庄司なども志功のために印を刻っています。

北大路魯山人などは篆刻家になろうとしたくらいの人です。石印に限らず、美しく色に焼けた陶印もたくさん残しています。

 

このように篆刻に興味を持っていたり、自身で刻っていた人は枚挙にいとまがありません。

数々の文人が印の中に見出した世界を一緒に探求できればと思います。

 

印について

なぜ印の事を印章・印璽と呼ぶのでしょうか?

印という名前秦の時代に皇帝の印をと呼び、その臣下のものを『印』と呼ぶという定義がされました

日本では天皇の印を御璽、国の印を国璽と呼んでいます。

また印の中でも将軍の印は『章』といいました。

当時の印は銅の合金や銀、まれには金と多くは金属の鋳造により作られていました。

後でこれらのことについては詳しく書きます。